連続企画「奈良少年刑務所の心をつなぐ」開催中

【奈良少年刑務所の心をつなぐ】…奈良少年刑務所は、建物は保存されるものの、更生プログラム等は継承措置がないまま廃庁に。どんなケアが行われていたのか?若者の立ち直りを見守ってきた人々の気持ちは? “塀の中”の実践事例を共有し、継承を図り、また広く社会と犯罪との関係について考えていく連続企画です。


⑭更生に携わり30年 保護観察官の想い〜さまざまな少年に出会って
2018年11月25日

出演:浦野浩昭(京都保護観察所長)


⑬法務大臣政務官の席から見てきた日本の行刑政策
2018年10月21日

出演:中村哲治(元法務大臣政務官・衆院議員・参院議員)


⑫奈良少年刑務所は一大職業訓練所だった〜“塀の外”より高かった資格合格率
2018年9月16日

出演:田中睦(元奈良少年刑務所IT講師)
https://www.facebook.com/events/478730002592908/
奈良少年刑務所は、一大職業訓練所でした。1964年には少年刑務所としてはじめて総合職業訓練施設に指定、社会復帰のためにさまざまな職業訓練を実施。各種資格も取得できました。時代による変遷をへて、最終的には14種目がおこなわれていました(理容科・電気通信設備科・建築科・クリーニング科・介護福祉科・内装施工科・情報処理技術科・ビルハウスクリーニング科・農業科・溶接科・ビジネススキル科・木工科・金属科・印刷科)。
今回の「心をつなぐ」は、このうち情報処理技術科の指導を担当していた田中睦さんのお話です。難関として知られる国家資格「情報処理技術者試験」に向けた指導では、一般の合格率が2割台のところ、田中さんの教室では5割を超える合格率を誇ったといいます。分数ができないような子もはいってくるのに、なぜそんなに伸びるのか。驚きの指導の実際や、外部講師からみた受刑者や刑務所のようすについてうかがいます。


⑪奈良少年刑務所詩集・みんなの朗読会
2018年8月26日

出演:朗読で参加のみなさま
https://www.facebook.com/events/207571849759982/
今回の「心をつなぐ」はオープンマイク。『空が青いから白をえらんだのです』『世界はもっと美しくなる』2冊の奈良少年刑務所詩集で受刑者の詩に感動なさった方、ぜひ参加して朗読し、その感動を語ってください。朗読は希望者先着10名さま。お早めにお申し込みを。聞くだけの方も歓迎です。


⑩仲間がいたから離脱できた!〜アル中で入院48回、しらふへの生還
2018年7月22日

出演:渡邊洋次郎(介護福祉士)
https://www.facebook.com/events/1781448555208828/
渡邊洋次郎さんは現在42歳。依存症との壮絶な戦いを経て、お酒や薬から「離脱」して丸9年になる。
かつて薬物とアルコールに依存し、離脱のための自助グループにも顔を出したが、離脱することはできず、入退院を繰り返した。30歳までの10年間で、48回も精神病院への入退院を繰り返し、窃盗で刑務所へ。父親の死に目に会えなかったことが、大きな後悔となった。
33歳で刑務所から出所後、自分の無力を認め、再び自助グループに参加するようになってはじめて、回復への道を歩むことができた。周囲から見放され、自分ですら自分を見放したくなるような絶望の人生を変えたのは、何だったのか。体験からお話しいただきます。


⑨真相究明への願い〜ある海外未解決殺人事件・遺族の声
2018年6月17日

出演:船木洋志(殺人事件被害者遺族)
https://www.facebook.com/events/167214547256217/
殺人事件被害者の遺族は、事件で心に大きな傷を受けるだけではなく、“世間”によってさらに深い傷を負わされることがあります。ことに未解決事件である場合、その痛みははかりしれません。日本では、犯罪被害者や被害者遺族への支援が充分とは言えません。「加害者を支援して、被害者の人権はどうなるのだ!」という声も大きく、加害者の更生に不可欠な社会的支援を阻む原因にもなっています。
船木洋志さんは、26年前にアメリカでお兄さまを殺され、事件は未解決のままです。当事者からの貴重なお話を伺います。


⑧人間だれもが弱い存在〜安全な社会を作る福祉の網の目
2018年5月20日

出演:須川浩一(社会福祉法人いづみ福祉会)
https://www.facebook.com/events/1981995342116226/
弱さを抱えずに生まれ育ってくる人間はいません。大半の人は、その「弱さ」に適切な支援があったからこそ、「弱さ」は「障害」にならず、また「犯罪」に結び付かずに生きていられるわけです。支援からもれたからこそ、追い詰められて犯罪を犯さざるを得なかった、ともいえます。多くの犯罪の原因は「人間の弱さ」。人間の本質は「性善説」でもなく「性悪説」でもなく「性弱説」ではないでしょうか。
私の仕事から見える障害児・者や犯罪者(触法障害者)や非行少年の現実、支援システム、障害や犯罪をどのように分析すればよいのかを整理するためのシンプルなモデル、防犯や非行防止対策の都市伝説、犯罪に結びつく心理的な特性など、話をしたいと思います。


⑦「詩は心の鍵」〜ホリスティック教育から見た社会性涵養プログラム
2018年4月28日

出演:成田喜一郎(元東京学芸大学大学院特命教授)
https://www.facebook.com/events/542513022783193/
奈良少年刑務所で十年間行われた独自の更生教育、社会性涵養プログラム。その普遍的価値と、ご自身の研究テーマ「ホリスティック教育」との関連に着目した成田喜一郎さん。社会性涵養プログラムを学問的に位置づけようと、刑務所内の授業にも自ら参加して研究を進めようとした矢先、奈良少年刑務所が廃庁となり、中断を余儀なくされました。
その研究を再開なさるという成田さんに、これまでの実践と、奈良少年刑務所で培われてきた教育プログラムの今後の展開の可能性について伺います。
成田さんのギターと歌もあります!


⑥『犯罪と非行』100枚の表紙〜デザイナー平野湟太郎の仕事
2018年3月25日

出演:平野湟太郎(平野湟太郎デザイン研究所)
https://www.facebook.com/events/1010478925770181/
犯罪や非行を犯した青少年に対する各種支援、また犯罪や更生保護についての研究を行ってきた、旧日立みらい財団。その機関誌『犯罪と非行』終巻までの14年間、50号にわたって表紙写真を撮ったデザイナーの平野湟太郎さんに、さまざまなお話を伺います。
平野さんは2010年に東京・代官山から事務所ごと奈良に移転した、吉野町在住の世界的デザイナーです。東京国立博物館法隆寺館や国立国会図書館関西館のサインデザインを担当。奈良では東大寺の仕事や「珠光茶会」のデザインも手がけています。東京時代には、寮美千子の泉鏡花賞受賞作『楽園の鳥』の装丁も。また『犯罪と非行』の表紙には、奈良少年刑務所が何度も登場しています。


⑤奈良監獄の煉瓦はどこから?〜女・こども・没落士族・囚人たちが作った煉瓦
2018年2月11日

出演:山岡邦章(関西煉瓦流通研究所所長・岸和田市教育委員会)
https://www.facebook.com/events/178674559381562/
旧奈良監獄/奈良少年刑務所は、明治41年に作られた名煉瓦建築です。囚人たちが自分たちで煉瓦を焼いたと言われていますが、詳細は不明です。また調査により、塀には堺で作った煉瓦が使われていることもわかりました。
関東大震災の起きた大正12年以降、煉瓦建築はほとんど作られなくなり、廃れてしまいました。かつて、一世を風靡した煉瓦。関西には、堺や岸和田に大きな煉瓦製造会社がありました。
煉瓦の研究をなさっている山岡邦章さんをお招きして、煉瓦産業がどのような役割を果たしたのか、どんな人々がその労働に従事したのか、明治の煉瓦が背負った日本独特の宿命について、お話をお伺いします。


④SOSを出せなくて〜依存症への落とし穴
2018年1月21日

出演:倉田めば(大阪ダルク・ディレクター)
https://www.facebook.com/events/111713416270714/
倉田さんは、薬物依存者のリハビリ施設・大阪ダルクで、自らが薬物依存症から回復してきた経験を踏まえながら、支援や相談を行なっています。人はなぜ依存症になるのか? そこからの回復の道は? 「ダメ。ゼッタイ。」の標語が、どれだけ依存者の回復を妨げているか。薬物依存について知れば知るほど、世間の常識とは違う、真の回復への道が見えてきます。「依存できる場ができて初めて依存症からの回復が始まる」を掲げるダルクでの実践をもとに、お話しいただきます。


③歌が救ってくれた〜覚醒剤とガンからの生還
2017年12月24日

出演:青木ペイ釣ケイスーケ(ミュージシャン)、いちもとみつる(ミュージシャン)
https://www.facebook.com/events/155451288539434/
「奈良少年刑務所の心をつなぐ」第3回は青木ペイ釣ケイスーケさんのクリスマス・ライブと、オープンマイク。
前半は「ペイ釣&ザ・ヒロポンズ」の歌と青木さんのお話を、後半は「奈良少年刑務所詩集」のなかから、みなさんの好きな詩を選んで朗読していただくオープンマイクです。
青木さんは、20代初め、覚醒剤の使用で奈良少年刑務所に服役しました。パンクロックへの憧れから、ヤバイ薬に手を出したといいます。現在は薬物から離脱して、ミュージシャンとして活躍中。その魂のある渋い歌声に、わたし(寮美千子)は一発でノックアウトされ、ファンになってしまいました。「心をつなぐ」のシリーズに歌のボランティアで友情出演していただきましたが、もっと聞きたい!という声も大きく、青木さんのライブとお話の会を企画しました。
奈良少年刑務所時代のお話や、どのようにして薬にはまっていったのか、どのようにして離脱できたのかについても、お話ししていただきます。青木さんは、昨年暮れ、ガンで医師から余命宣告を受けましたが、現在元気に闘病中。歌うことが生きる力に。みなさん、ぜひ応援してください!
後半のオープンマイクは、時間のある限り、どなたでも参加できます。以下の2冊のなかから選んで朗読してください。
『空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集』『世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集』
どんな方が、どの詩を選んでくださるのか、楽しみです。
心の熱くなるクリスマスイブを!

⇒NHK報道の動画 2018年1月31日


②「ぼくのミルクは缶コーヒーだった」〜加害者になる前に被害者だった
2017年11月26日

出演:小暮芳信(NPO法人釜ケ崎支援機構職員)
https://www.facebook.com/events/1952817385041380/
「奈良少年刑務所の心をつなぐ」第2回は「加害者」の立場だった方にお話を聞かせていただきます。
講師は、小暮芳信さん。詐欺グループに加わり、免許証偽造の罪で服役しました。彼が偽造した免許証があまりに精巧だったため、その後、免許証にICチップが組み込まれたという逸話の持ち主。なぜ、ぬきんでた能力を社会に生かせず、詐欺グループに加わったのか。その背後には、筆舌に尽くしがたい過酷な生育歴がありました。
また、服役した官民協働刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(島根県浜田市)で受けた更生教育についても語っていただきます。
重大犯罪の背景と更生教育の価値について考える、貴重な機会となるでしょう。
今回も前回に引き続き、青木ペイ釣ケイスーケさんを特別ゲストにお招きし、歌っていただきます。青木さんは奈良少年刑務所の卒業生。現在はミュージシャンとしてご活躍中です。お楽しみください!


①北風と太陽〜心を開いた詩の教室とは?
2017年10月22日

出演:竹下三隆(元奈良少年刑務所教育官)
https://www.facebook.com/events/1741996396104958/
奈良少年刑務所で、寮美千子・松永洋介とともに「社会性涵養プログラム」を作り上げてきた元教育官の竹下三隆さんに、更生の本質についての話を伺います。
奈良少年刑務所で足かけ10年続いた「社会性涵養プログラム」の詩の授業は、少年たちの心の扉を開く成果を上げ、注目されてきました。これは、刑務所の教官と外部講師らが手探りで作りあげてきたものです。その方法論の核を提示したのが当時の教育官で臨床心理士の竹下三隆先生。「北風より太陽」というこのプログラムの本質について、外部講師だった寮美千子・松永洋介を交えて話を伺います。
「かくあるべし」という規範意識を脱ぎ去って、自由になること。別の自分に変わる必要はなく、本来の自分に戻ること。身につけてきた鎧が、実は自らを縛る重荷だったかもしれず、それを脱ぎさると、自由でしなやかな世界が広がっているということ。いまを生きるヒントのたくさん詰まったお話が聞けると思います。

旧トップページ:明治の名煉瓦建築・奈良少年刑務所の重要文化財指定と保存を求めます

“世界の一流国”をめざした明治日本の美しい記念碑「奈良監獄/奈良少年刑務所」。
築108年の現役施設。一刻も早く重要文化財に指定し、将来にわたる保存と活用を!

【近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会】
2014年10月設立の任意団体
会長・山下洋輔(ジャズピアニスト、奈良監獄設計者山下啓次郎の孫)

最新情報はFacebookページで発信しています
近代の名建築 奈良少年刑務所を重要文化財に!(Facebook)

▼毎日新聞夕刊2014年10月9日掲載
毎日新聞夕刊2014-10-09

イベント(終了):8月31日〜9月5日「産業遺産写真展とそれぞれの遺産展」こうべまちづくり会館

2017年8月31日〜9月5日、写真展「産業遺産写真展とそれぞれの遺産展」が開催されます。神戸・元町のこうべまちづくり会館B1F。9時半〜18時(初日13時から。最終日17時まで)。奈良少年刑務所を宝に思う会は、旧奈良監獄/奈良少年刑務所の現役時代の写真パネルを20点展示します。

  • 『ニッポンの産業遺産』前畑洋平・温子(NPO法人J-heritage)…我が国の近代化・経済成長を今に伝える産業遺産。遺産特有の景観は過去への旅に誘ってくれる。展示では全国30箇所の産業遺産を紹介している。写真を通じて先人からのバトンを受け取ってもらう機会が作れれば嬉しい。
  • 『昭和モダン建築遺産』北夙川不可止&黒沢永紀…東京と京阪神に現存する、狂騒の20年代を今に伝える珠玉の近代建築遺産。文化コラムニスト、北夙川不可止の文章と、軍艦島伝道師、黒沢永紀の写真によるフォトブック『東西名品昭和モダン建築案内』(洋泉社)より抜粋。
  • 『現役時代の奈良少年刑務所(旧奈良監獄)』奈良少年刑務所を宝に思う会&ならまち通信社(撮影:上條道夫)…今年、建物が国の重要文化財に指定され、刑務所としては廃止された奈良少年刑務所。今後は行刑史料館として再出発、ホテルも併設される予定です。2010年に撮影した、現役時代の美しい姿です。
  • 『交通遺跡』なな爺(特殊同人 電幻開発)…産業が生まれ人々が住むと交通が発生するように、産業が消え人々が離れるとそこには交通の跡が遺される。鉄道こそが交通だった時代、鉱山や林業が盛んだった時代、交通網の整備が過剰になった時代、時代の変化は遺跡となって埋もれている。
  • 『街に隠れた団地の美』けんちん&たまぞう(団地愛好家集団『チーム4.5畳』)…大量生産された画一的なハコと思われがちな『団地』。しかし、実は設計者の創意工夫や試行錯誤の賜物なのです。その住環境の素晴らしさと美しさを写真を通してお伝えできればと展示に参加させていただきました。

Facebookイベント

イベント(終了):7月15日に奈良少年刑務所見学会開催 一般参加者募集(6月10日〆切)

2017年7月15日、奈良少年刑務所(現・奈良拘置支所、重要文化財旧奈良監獄)の見学会が開催されます。産業遺産の見学・記録・活用に力を注いでいるNPO法人J-heritageが窓口となり、一般参加者を募集中。電子メールで申し込み、抽選で選ばれた方が参加できます。今後は民間に委託されるため、行刑施設としてはおそらく最後の見学会となります。
申し込みや参加の詳細は、以下のJ-heritageサイトをご参照ください。
奈良少年刑務所見学会(J-heritage ジェイ・ヘリテージ)

山下洋輔会長コメント:旧奈良監獄・奈良少年刑務所を重要文化財とする文化審議会答申について 2016年10月21日

▼奈良少年刑務所を宝に思う会・山下洋輔会長コメント(2016/10/21)

「旧奈良監獄」現在の「奈良少年刑務所」が重要文化財に指定されるという知らせに喜びと驚きを禁じ得ない。鹿児島、長崎、金沢、千葉と共に「明治の五大監獄」として建設されたこの建物は、実は私の祖父啓次郎が設計したものだ。奈良以外のものは全て、移転、破壊、一部保存、内部改修がされていて、当時のままの姿はここにしか残っていない。同じ運命をたどるのだろうとなかば諦めていたが、今回は思わぬ大逆転全貌保存本塁打となった。
 その原動力は「奈良少年刑務所を宝に思う会」だ。これを早い時期に立ち上げてくださり、設計者の孫の私を会長にすえて下さった作家の寮美千子さんとご賛同された方々に心から御礼申し上げたい。寮さんは9年にわたって少年刑務所の「社会性涵養プログラム」教育にあたられてきた。その間に少年達の書いた詩も編集して『空が青いから白をえらんだのです』『世界はもっと美しくなる』として出版もされた。保存運動に大きな影響を及ぼしたことはまちがいない。また地元の皆様方から「保存要望書」が出されたとも聞く。異例のことだ。こういう施設は皆他所に行って欲しいと思うものなのに。奈良の人々の懐の深い大和心の所以だろうか。
 最後に私も初めて知ったエピソードを書く。ジャズ仲間のアルトサックス奏者・津上研太はチャーリーというミドルネームを持つ男だがこの男のおじいさんが、若林忠志という野球の名投手だった。ハワイ生まれでヘンリーと呼ばれ、やがて出来たばかりの阪神タイガース(当時は「大阪タイガース」)に入って大スターになった。この人が奈良少年刑務所を慰問しているのだ。昭和24年12月14日の日付けで、「奈良収容者自治会代表」による長い礼状が署名入りで残っている。『若林忠志が見た夢』(内田雅也著/彩流社)の中に「いただきました優勝楯は永く当所に残して」という一文がある。まだあるのだろうか。(注)
 これも含めて数々の更生プログラムの記憶が残るこの場所の108年の歴史も、是非とも保存事業でそのまま残して欲しい。正確な資料を残す「博物館」の実現を心から望みたい。
 今まではどこかおおっぴらに「これはぼくのおじいちゃんが造ったものなんだよ」と言えなかった明治の五大監獄が、こういう扱いになったことで、これからは「あの重要文化財は、おれの祖父が造ったんだよ」と言える心境の変化に、恥ずかしながら気づいている次第だ。
山下洋輔

注:若林忠志が贈った優勝盾は現存し、2016年も「若林杯」のソフトボール大会が開かれた。内田雅也:刑務所閉鎖後も引き継がれる「若林杯」の精神(スポニチアネックス 2016年9月6日)

※本コメントは、報道などで自由にご使用ください。

保存活用に関する要望書:「市民の声を受け止めて、新施設に生かすための「窓口」を、ぜひ設定してください」2016年7月26日

▼奈良少年刑務所の保存活用に関する要望書(2016/07/26)

法務大臣 岩城光英殿
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素より本会の活動につきましてご理解を賜り、厚く御礼を申し上げます。
このたびの奈良少年刑務所の突然の廃庁のお知らせをお伺いし、大変驚くとともに、明治の名煉瓦建築を重要文化財指定し、保存・活用する方針であることを知って、ほんとうにうれしくありがたく存じております。
建物というハード面は残されることになりましたが、奈良少年刑務所の更生教育のソフト面が今後どのように継承されるかを案じております。ご承知のように、教誨師、篤志面接委員をはじめ、多くの市民ボランティアが、少年たちの更生と社会復帰を願って、心を合わせて長年活動を行なってきました。教誨師の中には、指導歴が半世紀に及ぼうとしている方もいらっしゃいます。若者への教育では「東の川越、西の奈良」と言われるほど、先進的なことを行なってきたともっぱらの評判です。建築物としては一番古い刑務所で、一番先進的な教育を行なってきたわけで、このような伝統が、廃庁とともに、もしも雲散霧消してしまうのであれば、大変残念なことです。
奈良少年刑務所は、旧奈良監獄として、民間に託され、営利事業を行なう予定であると報道されました。ぜひ、そのなかに、奈良少年刑務所の教育の伝統を生かし、一般社会に還元する場を作ってください。具体的には、元教誨師や元篤志面接委員による講話や面談、刑務所内で行なわれていた暴力回避プログラムや命の教育などの授業を、一般に向けて行なうカルチャースクールのような場や、困難を抱えた少年少女を受け容れ、彼らが心を癒やし、その居場所となるような場を設定していただければと存じます。
また、町の人々からはアートの拠点に、音楽祭の開催を、など、さまざまな希望やアイデアが寄せられています。これらも含め、一般市民の声を受け止めて、新施設に生かすための「窓口」を、ぜひ設定してください。
さらには、新施設完成の暁に、運営企画にも、市民が参加できるような体制を整えていただければと存じます。そのために、管理業者募集の条件として「市民及び奈良の企業が、必ず企画運営の一部に携わること」といった文言を提示していただければと切望します。充分に収益を上げつつ、高度な文化発信をしていける場所になることを確信しています。
貴下におかれましては、これらの旨あらためてご理解いただき、ご検討くださいますよう、深くお願い申し上げる次第です。敬具

年表:これまでの活動・建物保存に関する主な動き(2017年10月9日更新)

1992年

8月
旧長崎刑務所が廃止(諫早市内で新築移転)

2003年

8月
法務省が「奈良少年刑務所新営工事事業評価資料」を公表 奈良少年刑務所の建物の大半を解体・新築する内容 結果的には実施されず

2007年

6月
旧長崎刑務所解体(明治41年築、「明治五大監獄」の一つ長崎監獄)(衝撃の廃墟/旧長崎刑務所を訪ねる旧長崎刑務所・その後旧長崎刑務所のその後のその後

2010年

3月〜5月
写真展「知られざる名建築 ~旧奈良監獄・奈良少年刑務所の美~」 上條道夫撮影 ならまち通信社主催 於:奈良市 この後も「奈良矯正展」などいくつかの会場で不定期に展示
3月〜9月
写真展「PRISON 100年の時を刻む奈良少年刑務所」 外山ひとみ撮影 キヤノンギャラリー(銀座・福岡・札幌・梅田・名古屋・仙台)で展示
6月
ノンフィクション『空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集』(長崎出版のち新潮文庫)発売 寮美千子編 建物内外の写真(上條道夫撮影)を掲載

2014年

3月
奈良県教育委員会が「奈良県の近代化遺産 奈良県近代化遺産総合調査報告書」を刊行 奈良少年刑務所について詳細に記載
10月18日
【宝に思う会】設立総会 於:奈良市 設立趣意書
11月1日
【宝に思う会】勉強会①「加害者の痛み 被害者の悲しみ」 寮美千子(作家・奈良少年刑務所社会性涵養プログラム講師) 於:京都市
11月30日
【宝に思う会】勉強会②「重要文化財の基礎知識 高野口小学校の重文指定の経験から」 神吉紀世子(京都大学教授) 於:奈良市
12月10日
名古屋市庁舎(昭和8)・愛知県庁舎(昭和13)が国の重要文化財に指定 現役庁舎として初めて
旧富岡製糸場の明治建築3棟が国宝に指定

2015年

2月28日
【宝に思う会】勉強会③「古き良きもの、伝統ある遺産をのこす」 松永洋介(「宝に思う会」事務局長) 於:大阪市
4月29日
【宝に思う会】勉強会④「般若寺と奈良少年刑務所の交流 工藤良任(般若寺住職) 於:奈良市
6月10日
日本建築学会が「奈良少年刑務所の保存活用に関する要望書」を法務大臣に提出
8月21日
【宝に思う会】勉強会⑤「みんなで守った赤煉瓦建築」 内藤恒平(赤煉瓦ネットワーク) 於:奈良市

2016年

2月9日
旧網走監獄が国の重要文化財に指定 移築・再現され博物館網走監獄として公開中
5月18日
奈良少年刑務所の地元自治会・自治連合会が、建物の重要文化財指定と保存を求める要望書を提出(ニュース奈良の声
6月14日
【宝に思う会】勉強会⑥「中川五郎「奈良少年刑務所詩集」を歌う」 於:奈良市
6月21日
奈良県議会が「奈良少年刑務所の洋風建造物を重要文化財に指定し存続することを求める意見書」を可決
7月
奈良少年刑務所の今年度での廃庁(閉鎖)が決まり、建物は保存の方向と報道(朝日「最古の刑務所閉鎖へ 「明治の五大監獄」 奈良」毎日「奈良少年刑務所 年度内閉鎖、保存へ 「明治の五大監獄」」奈良新聞「奈良少年刑務所年度末閉鎖 建物 文化財指定の動き」共同「奈良少年刑務所を保存へ 明治の「五大監獄」の一つ」NHK「明治建築の刑務所閉鎖 保存へ」読売「奈良少年刑務所閉鎖へ」、日経BP「国内最古の奈良少年刑務所をコンセッションで民間転用、法務省が保存方針」) 奈良新聞には宝に思う会事務局長松永のコメントも掲載
7月26日
【宝に思う会】保存活用に関する要望書を提出
7月29日
【宝に思う会】奈良ドリーム刑務所計画 旧奈良監獄の活用を夢みる集い①開催 於:奈良市
8月1日
奈良少年刑務所の内部を報道陣に公開(共同通信の空撮動画読売「保存決定の少年刑務所、「威信かけた」装飾公開」産経「奈良少年刑務所を公開 老朽化で廃止後、ホテル活用も」毎日「奈良少年刑務所 法務省が施設を公開 年度末で閉鎖 「住民交流存続を」」
9月10日・11日
奈良少年刑務所として最後の一般公開イベント「奈良矯正展」開催
10月
ノンフィクション『世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集』(ロクリン社)発売 寮美千子編
10月21日
【宝に思う会】旧奈良監獄を重要文化財にとの文化審議会答申を受けて、山下洋輔会長のコメントを発表
11月
『写真集 美しい刑務所 明治の名煉瓦建築 奈良少年刑務所』(西日本出版社)発売 上條道夫写真・寮美千子文

2017年

2月23日
奈良少年刑務所の明治建築が「旧奈良監獄」として国の重要文化財に指定
3月11日
奈良少年刑務所の中庭で近隣住民を対象にした山下洋輔コンサート開催(江川紹子「文化遺産となった美しい刑務所~設計者の孫・山下洋輔さんに聴く」朝日「山下洋輔さん、奈良少年刑務所でコンサート」毎日「山下洋輔さんがコンサート 感謝のジャズ」産経「奈良少年刑務所で記念演奏 祖父設計の山下洋輔さん」奈良新聞「魂の音 奈良、祖父へ – 近隣住民楽しむ/奈良少年刑務所で山下洋輔さん演奏」
3月31日
奈良少年刑務所廃庁(拘置区は京都拘置所奈良拘置支所に改組)
7月15日・16日
旧奈良監獄/奈良少年刑務所最後の一般見学会(奈良市「旧奈良監獄(奈良少年刑務所)見学会」J-heritage「奈良少年刑務所見学会」朝日「奈良少年刑務所、最後の見学会 改装後「監獄ホテル」に」産経「「旧奈良監獄」“最後の姿” 改修前に舎房や中央看守所など公開」奈良新聞「近代化の歴史を体感 – 最後の見学会に1万人/奈良少年刑務所」

連絡先

近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会
事務局:ならまち通信社
〒630-8315
奈良市中辻町1-1-1F(101)
info@narapress.jp
TEL・FAX 0742-24-4800
ケータイ 070-5024-9428(松永)

設立趣意書:「わたしたちは、建物の全貌を、日本の近代化遺産として、後世に残していくことを強く望んでいます」2014年10月18日

▼近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会 設立趣意書(2014/10/18)

奈良少年刑務所は、明治41年竣工の名煉瓦建築として、いまも、奈良市般若寺町の丘の上に、その偉容を誇っています。2013年の「日本赤煉瓦建築番付」では、西の横綱の一つに指名されました。放射状に監房の伸びた様式のこの刑務所は、明治時代、国がその威信をかけて造った「明治五大監獄」の一つでした。千葉、金沢、長崎、鹿児島はすでに取り壊され、全貌が残っているのは、奈良のみです。しかも、刑務所としてすべて現役で使用されています。

明治時代、日本は、さまざまな不平等条約を抱えていました。外国人の犯罪に関しては、「人権を守れるまともな監獄がない」という理由で、領事裁判権を取られていました。これに発憤した政府は、司法省の建築技官である山下啓次郎氏を海外に派遣、徹底的に研究を行い、山下氏らの設計により「明治五大監獄」を建築しました。そして、西欧諸国に「わが国にもこんな立派な刑務所がある」と主張するために、過剰に立派な監獄を築いたのです。この結果、不平等条約は改正されました。

使用している煉瓦は、すべて当時の囚人たちが、木津川のほとりの煉瓦工場で焼いた手作り煉瓦だと言われています。独特の風合いと、その一つ一つを積みあげて生まれる美しさは格別で、いまはもう、新たに造ることの叶わない、貴重な建築物です。

刑務所といえば、嫌われるのが世の常ですが、奈良少年刑務所は、その美しさゆえに、地元の人々にも深く愛されています。年に一度の一般公開日「矯正展」には、多くの人が訪れ、刑務所内部の見学ツアーは常に満員です。刑務所を身近に感じることで、出所後の少年たちへの眼差しも自然と温かいものになります。ここで暮らす少年たちにとっても、情緒の上でよい影響があり、更生に寄与していることと信じています。

奈良少年刑務所は、「奈良の宝」「日本の宝」と呼べる貴重な建物であるにもかかわらず、文化財指定が一つも付いていません。わたしたちは、建物の全貌を、日本の近代化遺産として、後世に残していくことを強く望んでいます。そのため、文化財指定を求める活動を行うとともに、受刑者の人権確保のための安全性・居住性、職員にとっての使い勝手など、必要な事項を検討し、提案していく所存です。また、会の活動を通じて、刑務所と更生教育への理解を深め、安全安心な社会を作ることに寄与することを目指しています。