イベント:7月15日に奈良少年刑務所見学会開催 一般参加者募集(6月10日〆切)

2017年7月15日、奈良少年刑務所(現・奈良拘置支所、重要文化財旧奈良監獄)の見学会が開催されます。産業遺産の見学・記録・活用に力を注いでいるNPO法人J-heritageが窓口となり、一般参加者を募集中。電子メールで申し込み、抽選で選ばれた方が参加できます。今後は民間に委託されるため、行刑施設としてはおそらく最後の見学会となります。
申し込みや参加の詳細は、以下のJ-heritageサイトをご参照ください。
奈良少年刑務所見学会(J-heritage ジェイ・ヘリテージ)

山下洋輔会長コメント:旧奈良監獄・奈良少年刑務所を重要文化財とする文化審議会答申について 2016年10月21日

▼奈良少年刑務所を宝に思う会・山下洋輔会長コメント(2016/10/21)

「旧奈良監獄」現在の「奈良少年刑務所」が重要文化財に指定されるという知らせに喜びと驚きを禁じ得ない。鹿児島、長崎、金沢、千葉と共に「明治の五大監獄」として建設されたこの建物は、実は私の祖父啓次郎が設計したものだ。奈良以外のものは全て、移転、破壊、一部保存、内部改修がされていて、当時のままの姿はここにしか残っていない。同じ運命をたどるのだろうとなかば諦めていたが、今回は思わぬ大逆転全貌保存本塁打となった。
 その原動力は「奈良少年刑務所を宝に思う会」だ。これを早い時期に立ち上げてくださり、設計者の孫の私を会長にすえて下さった作家の寮美千子さんとご賛同された方々に心から御礼申し上げたい。寮さんは9年にわたって少年刑務所の「社会性涵養プログラム」教育にあたられてきた。その間に少年達の書いた詩も編集して『空が青いから白をえらんだのです』『世界はもっと美しくなる』として出版もされた。保存運動に大きな影響を及ぼしたことはまちがいない。また地元の皆様方から「保存要望書」が出されたとも聞く。異例のことだ。こういう施設は皆他所に行って欲しいと思うものなのに。奈良の人々の懐の深い大和心の所以だろうか。
 最後に私も初めて知ったエピソードを書く。ジャズ仲間のアルトサックス奏者・津上研太はチャーリーというミドルネームを持つ男だがこの男のおじいさんが、若林忠志という野球の名投手だった。ハワイ生まれでヘンリーと呼ばれ、やがて出来たばかりの阪神タイガース(当時は「大阪タイガース」)に入って大スターになった。この人が奈良少年刑務所を慰問しているのだ。昭和24年12月14日の日付けで、「奈良収容者自治会代表」による長い礼状が署名入りで残っている。『若林忠志が見た夢』(内田雅也著/彩流社)の中に「いただきました優勝楯は永く当所に残して」という一文がある。まだあるのだろうか。(注)
 これも含めて数々の更生プログラムの記憶が残るこの場所の108年の歴史も、是非とも保存事業でそのまま残して欲しい。正確な資料を残す「博物館」の実現を心から望みたい。
 今まではどこかおおっぴらに「これはぼくのおじいちゃんが造ったものなんだよ」と言えなかった明治の五大監獄が、こういう扱いになったことで、これからは「あの重要文化財は、おれの祖父が造ったんだよ」と言える心境の変化に、恥ずかしながら気づいている次第だ。
山下洋輔

注:若林忠志が贈った優勝盾は現存し、2016年も「若林杯」のソフトボール大会が開かれた。内田雅也:刑務所閉鎖後も引き継がれる「若林杯」の精神(スポニチアネックス 2016年9月6日)

※本コメントは、報道などで自由にご使用ください。

保存活用に関する要望書:「市民の声を受け止めて、新施設に生かすための「窓口」を、ぜひ設定してください」2016年7月26日

▼奈良少年刑務所の保存活用に関する要望書(2016/07/26)

法務大臣 岩城光英殿
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素より本会の活動につきましてご理解を賜り、厚く御礼を申し上げます。
このたびの奈良少年刑務所の突然の廃庁のお知らせをお伺いし、大変驚くとともに、明治の名煉瓦建築を重要文化財指定し、保存・活用する方針であることを知って、ほんとうにうれしくありがたく存じております。
建物というハード面は残されることになりましたが、奈良少年刑務所の更生教育のソフト面が今後どのように継承されるかを案じております。ご承知のように、教誨師、篤志面接委員をはじめ、多くの市民ボランティアが、少年たちの更生と社会復帰を願って、心を合わせて長年活動を行なってきました。教誨師の中には、指導歴が半世紀に及ぼうとしている方もいらっしゃいます。若者への教育では「東の川越、西の奈良」と言われるほど、先進的なことを行なってきたともっぱらの評判です。建築物としては一番古い刑務所で、一番先進的な教育を行なってきたわけで、このような伝統が、廃庁とともに、もしも雲散霧消してしまうのであれば、大変残念なことです。
奈良少年刑務所は、旧奈良監獄として、民間に託され、営利事業を行なう予定であると報道されました。ぜひ、そのなかに、奈良少年刑務所の教育の伝統を生かし、一般社会に還元する場を作ってください。具体的には、元教誨師や元篤志面接委員による講話や面談、刑務所内で行なわれていた暴力回避プログラムや命の教育などの授業を、一般に向けて行なうカルチャースクールのような場や、困難を抱えた少年少女を受け容れ、彼らが心を癒やし、その居場所となるような場を設定していただければと存じます。
また、町の人々からはアートの拠点に、音楽祭の開催を、など、さまざまな希望やアイデアが寄せられています。これらも含め、一般市民の声を受け止めて、新施設に生かすための「窓口」を、ぜひ設定してください。
さらには、新施設完成の暁に、運営企画にも、市民が参加できるような体制を整えていただければと存じます。そのために、管理業者募集の条件として「市民及び奈良の企業が、必ず企画運営の一部に携わること」といった文言を提示していただければと切望します。充分に収益を上げつつ、高度な文化発信をしていける場所になることを確信しています。
貴下におかれましては、これらの旨あらためてご理解いただき、ご検討くださいますよう、深くお願い申し上げる次第です。敬具