大和郡山市にあった「金魚電話ボックス」の問題と、関係資料のページです。
美術家山本伸樹の代表作「メッセージ」(1998年〜)に酷似した作品「テレ金」が2011年に出現した。山本が抗議したが、その後も「テレ金」から「金魚電話」そして「金魚電話ボックス」と、同一部材による作品が、作者と名前を変えながらくりかえし展示されるという異様な事態に。とくに2014年に奈良県大和郡山市の柳町商店街に「金魚電話ボックス」が常設展示されてからは、逆に山本が「パクリ」であるといった誹謗中傷をうけるようにさえなった。山本は柳町商店街側に抗議するが、無視されつづけた。やがて山本の周辺で「これは山本だけの問題ではない、芸術家の著作権についての大きな問題だ」との話がもちあがった。いきなり訴訟をおこすのでなく円満に解決できないか交渉をこころみることになり、大和郡山市の隣町である奈良市在住の作家寮美千子が山本の代理人となった。交渉はまとまり、「金魚電話ボックス」は、山本の「メッセージ」が原作であることを明記し、公認作品として再スタートをきることになった(費用はすべて山本がもち、柳町商店街の金銭負担はゼロ)。ところがその後、柳町商店街が一方的に合意を破棄。作品を撤去しつつ「山本の著作権は侵害していない」「裁判になったら断固として戦う」と主張している。山本は訴訟をおこすことにした。
日付 | 山本伸樹「メッセージ」の履歴 | 「テレ金」「金魚電話」「金魚電話ボックス」の履歴 |
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1998 | ||
11/2〜8 | ★トラッシュライブ’98 in 西新宿 ゴミと美術家たち展(新宿住友ビル前)※これ以前には「電話ボックス様の水槽に魚を泳がせる」作品は確認されていない。世界初発表。⇒東京新聞 ⇒週刊読売 | |
1999 | ||
5/29〜6/27 | ★いわきの美術IV 境界を越えて—立体表現の拡がり(Part I)(いわき市立美術館/福島県) | |
9月〜10/1 | ★Art Forum-22 in Tama(スペースエヌズ/東京都立川市) | |
10月〜11月 | 名栗湖野外美術展(名栗湖畔/埼玉県名栗村) | |
2000 | ||
9月 | Inner Spaces Multimedia(ポーランド・ポツナン) | |
12/16〜1/7 | ★現代美術展〈半島1〉 —三浦市まるごと美術館(三崎駅前/神奈川県) | |
2001 | ||
3/26〜4/9 | ★Aqua Celebration (西荻WENZ-II/東京都杉並区)⇒週刊新潮 | |
2002 | ||
1/5〜6 | HOT HEAD WORKS 2002 装う身体/装わない身体 舞台美術(スパイラルホール/東京都港区) | |
4/3〜14 | 円周のない円展(神奈川県民ホールギャラリー/横浜市) | |
2004 | ||
5/24〜7/5 | 未来へ開かれた空間展(神奈川大学セレストギャラリー/横浜市) | |
2011 | ||
3/11 | 東日本大震災。山本は福島県いわき市で被災。3/11当日に震度6弱、4/11に震度6弱、4/12に震度6弱の地震に襲われた。 | |
5月 | 京都造形芸術大学で銅金裕司教授が1回生を集めて金魚部を創設、指導にあたる。 | |
9/15 | 金魚部の企画案「テレ金」がおおさかカンヴァス推進事業の公募に入選。※この案では電話機は緑色だった。審査概要発表と講評はヤノベケンジ(審査委員。京都造形芸術大学で銅金の同僚)。 | |
10/22〜30 | ◆金魚部が「テレ金」を発表。(水都大阪2011・おおさかカンヴァス推進事業/中之島公園)※東日本大震災の被災地から入手した電話ボックスを加工した作品だが、展示ではそのことは伏せていた。製作は京都造形芸術大学のウルトラファクトリー(ディレクターはヤノベケンジ)でおこなわれた。⇒展示風景動画 ⇒目撃ツイート1 ⇒目撃ツイート2 | |
2012 | ||
3/6〜11 | 金魚部が「テレ金」を展示。(映画『茜色の約束 サンバdo金魚』公開記念/イオンモール大和郡山)⇒告知ツイート ⇒目撃ツイート | |
3/31〜4/3 | 金魚部が「テレ金」を展示。(第52回大和郡山お城まつり/大和郡山市三の丸会館)⇒目撃ツイート ⇒報告ツイート | |
7/26 | ◆金魚部がおおさかカンヴァス推進事業での「テレ金」リバイバル展示(10/13〜)を予告。8/1、おおさかカンヴァスのサイトでも告知。 | |
9/28 | おおさかカンヴァス推進事業が「テレ金」リバイバル展示を「作者の辞退により展示中止」と告知。 | |
2013 | ||
3/30〜31 | Voice from Monochrome 舞台美術(神奈川芸術劇場/横浜市) | |
3/31 | K-Poolプロジェクトが「テレ金2013」を展示。(第53回大和郡山お城まつり/大和郡山城跡追手門前)⇒目撃ブログ | |
4/17〜5/5 | ★山本伸樹個展—私は福島に生まれた。私は福島に住んでいる。—(伊達市梁川美術館/福島県)⇒告知ツイート | |
8/3〜11 | ★ART MEETING 2013 田人の森に遊ぶ(福島県いわき市) | |
10/12〜20 | ◆金魚の会が「金魚電話」を展示。「テレ金」部材の再使用。(奈良・町家の芸術祭はならぁと2013 柳町商店街ゾーン、銅金裕司キュレーター/柳町商店街)⇒山本の抗議についての野村実行委員長からの回答 ⇒目撃ツイート | |
2014 | ||
2/22 | ◆柳町商店街有志が「金魚電話ボックス」を常設展示。「金魚電話」部材の再使用。(柳町商店街「K COFFEE」前) | |
8/2〜24 | ART MEETING 2014 田人の森に遊ぶ(福島県いわき市) | |
2016 | ||
11/1〜27 | ★仲見世でアート2016(川崎大師前仲見世通/川崎市)⇒「大和郡山のパクリ」ツイート ⇒「郡山の真似」ツイート | |
2017 | ||
2/25 | 柳町商店街伊藤理事長と山本の代理人寮美千子が面会。問題解決のための交渉がはじまる。 | |
6/1 | 交渉をへて、山本と柳町商店街側(伊藤・小山・森)が口頭で合意。 | |
8/21 | 山本と柳町商店街の合意にもとづき「金魚電話ボックス」横にキャプション掲示。 | |
10/26 | 山本が現地で作品の修正をおこなったうえで公認作品として再出発する予定だったが、柳町商店街が破棄。 | |
11/1〜26 | ★仲見世でアート2017(川崎大師前仲見世通/川崎市)⇒神奈川新聞 ⇒目撃ツイート | |
11/29 | 山本が大和郡山市に仲裁を依頼し、代理人寮が吉村副市長および上田市長と面会。 | |
12/13 | 大和郡山市が柳町商店街とも話して山本に「金魚の電話ボックス設置に関する協定書」案を回答するが、仲裁は不調に。 | |
12/28 | 山本が柳町商店街宛に「金魚の電話ボックス設置に関する協定書」案を出した。回答期限は2018/1/15。 | |
2018 | ||
1/31 | 柳町商店街は回答をひきのばしている。山本は柳町商店街の組合員にむけて「現代美術作家・山本伸樹から柳町商店街のみなさまへのメッセージ」を出した。 | |
3/28 | 柳町商店街が山本宛に回答書を出した。 | |
3/29 | 大和郡山市民の會田陽介が署名活動「大和郡山の金魚電話ボックスを撤去しないでください!!」をはじめる。 | |
4/3 | 毎日新聞が一報「金魚電話ボックス撤去 著作権トラブルで近く 観光客ら「もったいない」」を掲載。以後マスコミ報道多数。 | |
4/4 | 京都造形芸術大学が声明「大和郡山市柳町商店街の作品に関する件について」を出した。※この声明は銅金の関与について言及をさけている。 | |
4/11 | 大和郡山市民の工藤勉が「大和郡山の金魚電話ボックスを撤去しないでください!!」署名を柳町商店街と大和郡山市長に提出。オンラインと現地あわせて917筆。市長はコメントを発表。⇒産経記事 | |
4/12 | 柳町商店街が「金魚電話ボックス」にカバーをかけ、展示を終了。 | |
4/17 | 柳町商店街が「金魚電話ボックス」を完全に撤去。後日、組合員への説明文書を配った。 | |
8/26〜9/23 | ART MEETING 2018 田人の森に遊ぶ(福島県いわき市)⇒展示風景 | |
9/19 | 山本が奈良地裁に訴訟を提起。再設置の禁止と部材の廃棄、損害賠償と慰謝料を求める。⇒山本のコメント | |
9/20 | 奈良市でイベント「美術家山本伸樹、金魚電話問題を語る〜アートとまちおこしの幸せな関係をめざして」開催。 | |
11/9 | 奈良地裁で第1回口頭弁論。 | |
2019 | ||
4/18 | 奈良地裁で口頭弁論、結審。 | |
7/11 | 奈良地裁で判決いいわたし。⇒判決文 | |
7/17 | 山本が大阪高裁に控訴。 | |
2020 | ||
7/29 | 大阪高裁で証人尋問。⇒報告ツイート | |
9/29 | 控訴審結審。 | |
2021 | ||
1/14 | 大阪高裁で判決いいわたし。⇒判決文 | |
1/27 | 商店街側が上告。 | |
4/13〜25 | 山本伸樹展 Message 2021(奈良市)※「メッセージ」新バージョンを映像展示。⇒展示風景 | |
8/25 | 最高裁は上告を受理せず、山本勝訴の高裁判決が確定。⇒調書(決定) ⇒山本のコメント | |
2018年9月19日、奈良地裁に訴訟提起。原告は山本伸樹(美術家、福島県いわき市在住)。被告は郡山柳町商店街協同組合ほか1名(いずれも奈良県大和郡山市)。「金魚電話ボックス」再制作の差止め、部材の廃棄、著作権侵害による損害賠償と慰謝料を求めた。300万円規模。論点等については訴状を参照。
2018年11月9日に第1回口頭弁論。その後は弁論準備手続が12月20日・2019年2月7日・3月14日にあり、4月18日の口頭弁論で結審した。
判決は2019年7月11日。原告の請求棄却。原告は、判決後の記者会見で、控訴の意向を表明した。
▼一審提訴時の報道(2018年9月19日)
▼一審判決についての論説
2019年7月17日に控訴。10月23日に第1回期日。その後12月24日・2020年3月10日・6月30日(新型コロナウイルス感染症の影響で4月14日から延期)に弁論準備手続。7月29日に証人尋問。9月29日に結審。10月6日付で裁判所から和解条項案がでて、11月2日に和解期日(和解せず)。
判決は2021年1月14日(1月7日から延期)。原告の逆転勝訴となった。
被告側は最高裁に上告した(1月27日付で上告受理申立書がでていたと、2月8日に原告代理人に通知があった)が、最高裁は受理せず、原告勝訴の高裁判決が確定した(8月25日付の「受理しない」との通知が26日に原告代理人にあった)。
▼二審判決についての論説
2021年12月23日更新(2018年9月9日公開) 作成:松永洋介(電話070−5024−9428/メールinfo@narapress.jp/ツイッター@narapress)