金魚電話ボックス問題と「メッセージ」


大和郡山市にあった「金魚電話ボックス」の問題と、関係資料のページです。

山本伸樹「メッセージ」と柳町商店街「金魚電話ボックス」
左:山本伸樹「メッセージ」 右:柳町商店街「金魚電話ボックス」

経緯と資料

美術家山本伸樹の代表作「メッセージ」(1998年〜)に酷似した作品「テレ金」が2011年に出現した。山本が抗議したが、その後も「テレ金」から「金魚電話」そして「金魚電話ボックス」と、同一部材による作品が、作者と名前を変えながらくりかえし展示されるという異様な事態に。とくに2014年に奈良県大和郡山市の柳町商店街に「金魚電話ボックス」が常設展示されてからは、逆に山本が「パクリ」であるといった誹謗中傷をうけるようにさえなった。山本は柳町商店街側に抗議するが、無視されつづけた。やがて山本の周辺で「これは山本だけの問題ではない、芸術家の著作権についての大きな問題だ」との話がもちあがった。いきなり訴訟をおこすのでなく円満に解決できないか交渉をこころみることになり、大和郡山市の隣町である奈良市在住の作家寮美千子が山本の代理人となった。交渉はまとまり、「金魚電話ボックス」は、山本の「メッセージ」が原作であることを明記し、公認作品として再スタートをきることになった(費用はすべて山本がもち、柳町商店街の金銭負担はゼロ)。ところがその後、柳町商店街が一方的に合意を破棄。作品を撤去しつつ「山本の著作権は侵害していない」「裁判になったら断固として戦う」と主張している。山本は訴訟をおこすことにした。

訴訟

一審(奈良地裁)

2018年9月19日、奈良地裁に訴訟提起。原告は山本伸樹(美術家、福島県いわき市在住)。被告は郡山柳町商店街協同組合ほか1名(いずれも奈良県大和郡山市)。「金魚電話ボックス」再制作の差止め、部材の廃棄、著作権侵害による損害賠償と慰謝料を求めた。300万円規模。論点等については訴状を参照。

2018年11月9日に第1回口頭弁論。その後は弁論準備手続が12月20日・2019年2月7日・3月14日にあり、4月18日の口頭弁論で結審した。
判決は2019年7月11日。原告の請求棄却。原告は、判決後の記者会見で、控訴の意向を表明した。

▼一審提訴時の報道(2018年9月19日)

▼一審判決についての論説

二審(大阪高裁)……確定

2019年7月17日に控訴。10月23日に第1回期日。その後12月24日・2020年3月10日・6月30日(新型コロナウイルス感染症の影響で4月14日から延期)に弁論準備手続。7月29日に証人尋問。9月29日に結審。10月6日付で裁判所から和解条項案がでて、11月2日に和解期日(和解せず)。

判決は2021年1月14日(1月7日から延期)。原告の逆転勝訴となった。

被告側は最高裁に上告した(1月27日付で上告受理申立書がでていたと、2月8日に原告代理人に通知があった)が、最高裁は受理せず、原告勝訴の高裁判決が確定した(8月25日付の「受理しない」との通知が26日に原告代理人にあった)。

▼二審判決についての論説

大阪高裁で「勝訴」の「びろーん」を掲げる山本伸樹
2021/1/14 大阪高裁にて

2021年12月23日更新(2018年9月9日公開) 作成:松永洋介(電話070−5024−9428/メールinfo@narapress.jp/ツイッター@narapress

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