カレッジ・レポート

2001年1月19日

和光大学

 自由教育の牙城、和光大学には門がない。東京・神奈川県境の木々に囲まれた坂を上がると、そこには間違いなくここにしかない特別な空気が流れている。キャンパスの中心にある小さな広場はその名も「ホーチミン広場」。ベトナム戦争当時、学生たちが反戦の象徴としてベトナム民族解放の英雄の名をつけたという。

 なぜかレンガ造りの大きなカマドがあり、学生たちがまきを燃やし、大きな釜と鍋でごはんやカレーを作っている。(冬は焼き芋が人気!)。このカマドは30年前の貧乏学生たちが共同自炊のために古レンガを積んで勝手に作ったもの。中国革命の英雄だった毛沢東が掲げたスローガンにちなみ、「自力更正かまど」というのが正式名称。学年のほとんどはもはや由来を知らないが、自分たちの力で食生活を楽しく豊かにしようという思いだけは受け継承がれているのだろうか。

 広場の向かいでは毎日のように学生同士のフリーマーケットが開かれる。品ぞろえは洋服や古本、CD、手作りのアクセサリーなどさまざま。ときには学生と母親の名コンビや、OBなんかが混じった店も出る。バーベキューをしたり、友達どうしで散髪したり、民族楽器のセッションが始まったりと、“なんでもアリ”な光景が広がる。驚いたことに、別段大学の許可はいらないという。

 ユニークな授業が多いのも和光大の売り。石器を作ったり、摩擦で火を起こせないと単位がもらえない岩城正夫教授の「原始技術史」。「しあわせ家族計画」はじめテレビに登場する火起こしはほとんどここの研究室が指導している。野外で集めた竹や木の実で民族楽器を作り、演奏する「音作りの現場(関根秀樹講師他)」は、リクルートが行った高校生のアンケート調査で「受けてみたい大学の授業」ベスト10入りしたとか。多彩な開講科目の中から、学部・学科の枠にとらわれず自分の興味ある授業を選ぶ自由が大きいのも魅力だ。

 2000年には文学科と芸術学科を母体に表現学部が生まれ、今以上にユニークな講座や講師が増える。しなやかな感性と発想力を持ち、個性あふれる和光の学生たち。大学教育の実験を行うための「小さな実験大学」という夢のような建学理念のもと、彼らは未来にある何かを求めて、今日もわが道を行く。

(出典失念)

※「自力更正かまど」は、原文で「自力厚生かまど」となっていたのを松永が勝手に修正。

松永洋介 ysk@ceres.dti.ne.jp